しずおかのはたけをまもるやまいぬ
静岡の畑を守る山犬
国内
未確認生物
- どんな話か
- 山犬は明治初期まで恐れられる一方、助けた家を秋の間守るなど、山の神の使いともされる存在だった。
- 細部
明治の初め頃まで、この地域では山犬、つまり狼が深く恐れられていた。集落全体を柵で囲い、夜に水汲みや用を足しに外へ出なくても済むようにしていたのも、山犬を避けるための工夫だったのだという。一方で山犬にまつわる話には、恐怖だけでなく恩義の記憶も残されている。ある家の四代前の姑は、山の焼畑小屋で粟の草取りをしていた際、上顎に骨を刺して苦しんでいた山犬を助けてやったことがあった。
すると、この山犬はその年の秋のあいだずっとこの家の畑を見守り、猪や鹿、兎による被害から守ってくれたばかりか、大きな鹿を仕留めて小屋の前に置いていくこともあったという。山を下りる際、姑は御礼として鹿肉を木の枝に吊るし、小声で「いるのかいないのか」と呼びかけたところ、山犬はすぐそばに控えていたという。別の話では、十七歳のときに炭木を切りに行った者が、連れていた犬が切り株に頭をこすりつけるのを見て、そばにあった山犬の糞を何となく納屋にしまい込んでおいた。
二十九歳のとき百日咳が流行し、祈祷を頼んだ法印から「この家には立派な守りがあるので狐は憑かない」と言われ、あの山犬の糞のことだと思い当たって見に行くと、いつの間にか消えていたという。また、焼畑で炊事をする際に山の神へ供える初穂を忘れてしまうと、その晩は一晩中山犬が不気味な声で鳴き続けたともいい、山犬は山の神そのもの、あるいはその使いとみなされている。
- 広まり方
- 『静岡県史 資料編24 民俗2』(1993年)所収、野本寛一「心意の中の動物」および中村羊一郎「有東木の暮らし」に記録がある。
- 地域
- 静岡県静岡市
- 年代
- 不明
- 検証状況
- 伝承由来
近代以前の民間伝承が下敷きになっている。 - タグ