たぬき
狸
国内
未確認生物
- どんな話か
- 化けた婆さんが猟師の獲物を奪おうとした話や、峠で行商の魚を盗む話など、狸の悪戯や憑依にまつわる6つの言い伝え。
- 細部
- 猟師が一頭の猪を仕留めたところ、どこからともなく手桶を提げた一人の婆さんが現れて、猪の肉を包丁で切り取り始めたことがあった。試しに婆さんへ鉄砲を撃ってみても何の手応えもなかったが、手にしていた手桶をねらって撃つと、婆さんはその場に倒れてしまう。近寄って見てみると、正体は大きな一匹の狸であったという。別の話では、あるおじいさんが狸と言い争いになったことがある。喉が渇いたおじいさんは持参していた水を飲んだが、水を用意していなかった狸は、その翌日、渇きに耐えられず死んでしまったのだという。地獄谷の近くを通ると毎晩何かに後をつけられ、三叉路にさしかかるとザダーンという奇妙な音が響くことがあるが、これも狸の仕業だとされている。また、夜になると手ぬぐいをかぶった嫁らしき人影が火を焚いているのが見えることがあり、翌朝その場所を確かめに行っても火を焚いた形跡は何もない。これも狸が火を灯して見せているのだという。行商人が風呂敷に魚を包んで各家を売り歩いていたころ、峠にさしかかると誰かに後をつけられる気配がし、足音のほうへ気を取られているうちに、いつの間にか魚だけが盗まれてしまうということもあった。これも狸の仕業と考えられている。さらに、60年ほど前にはこのあたりに古い狸が棲んでおり、たびたび人に取り憑くために祠を建てて祀っていたが、祀りごとを怠るようになると再び人へ取り憑くようになったという。あるお産をした人の様子を見た狸が取り憑いてしまい、日に日に弱っていくので、皆で祈祷を行うことになった。読経を千巻続けることを約束すると、30巻ほどで狸は千巻では出ていかないと言い出し、3日目に三千巻ではどうかと持ちかけると、それなら帰ってもよいが必ず祀ってほしいと答えたので、あらためて丁重に祀ったところ、病人はすっかり快復したのだという。
- 広まり方
- 1931年の『郷土研究』に掲載された矢頭和一「狸の化けた話」、1975年の民俗採訪『愛知県西加茂郡小原村』、1991年の『中京民俗』掲載の口承文芸記録などに残る。
- 地域
- 愛知県豊田市
- 年代
- 不明
- 検証状況
- 伝承由来
近代以前の民間伝承が下敷きになっている。 - タグ