たぬき
狸
国内
未確認生物
- どんな話か
- 海陽町の各地には、人に取り憑いたりいたずらで道に迷わせたりする狸の話が数多く語り継がれている。
- 細部
- 海陽町には狸をめぐる話が数多く伝わっている。芥附から田中へ渡る橋のたもとには杉の木と地蔵があり、そこに棲む狸がよく人に取り憑いたという。腹痛を起こしたある人にこの狸が憑いたときには、村人が集まって百万遍の数珠くりをしながら和尚が念仏を唱え、暴れて逃げ出した本人の背中をついて転ばせることで、ようやく狸を落とすことができたと伝えられている。芋畑を荒らした狸を捕らえて木に縛りつけ叩き殺した者もいたが、その報いか、嫁に狸が取り憑いて気が触れ、縛られていた木に毎日通うようになり、次の代、さらにその次の代の男の子にまで祟りが続いて棟の上を走り回るほどであったため、坊さんに拝んでもらっても効き目がなく、一家は土地を離れることになったという。着物欲しさに女性へ取り憑いたちょんころ狸の話もあり、通りかかったお遍路が祈祷の紙でその人の手を三日三晩あぶり続けても火傷ひとつ負わなかったが、「小豆ご飯が食べたい」という望みを聞き入れると、憑かれていた人は窓から飛び出して正気に戻り、後日藪に小豆ご飯を届けたとも伝わる。夜道を歩くときに狸に化かされたくなければ親指を隠しておくとよいとされ、狸が来たと感じたときは袖の下からそっとのぞき見るとよいといわれ、狸は提灯に化けてその灯を消しに来たり、祝言の道中で嫁に化けた大きな坊主として現れたり、美しい娘に化けても足もとだけはぼんやりしているといった見分け方も語り継がれている。お薬師さんのお堂では、南向きに寝たはずが起きると北向きになっているという狸のいたずらがしばしばあったという。吉原さんという名の老婆が元越峠で道に迷って三、四日行方不明になったのち山中で遺体となって見つかったのも、狸に化かされたためだとされる。宍喰で仕入れた魚を中山へ売りに行った魚屋が、地蔵堂の下にある三叉路で見慣れた道のはずが少し迷い、たどり着いてみると背負っていた魚の目玉だけがなくなっていたという話や、大正四年生まれの人の父親が山小屋に泊まった夜に大きな石が転がるような音を聞いたが翌朝には何の跡もなかったという話、戦後の米の買い出しの帰りに馳馬の元越で道がわからなくなり、狸の出る場所だからと女性三人がその場に座り込んで夜明けを待ったという話も伝えられている。
- 広まり方
- 『民俗採訪』1979年、国学院大学民俗学研究会「徳島県海部郡宍喰町」に記録されている。
- 地域
- 徳島県海陽町
- 年代
- 不明
- 検証状況
- 伝承由来
近代以前の民間伝承が下敷きになっている。 - タグ