しらたかのきつねにばかされたよる
白鷹の狐に化かされた夜
- どんな話か
- 白鷹町には名を持つきつねや化かし話が数多く伝わり、魚を取られたり夜道で怖い目に遭ったりしたという。
- 細部
白鷹町にはきつねに関する話が数多く伝わっている。地元では、沢沿いの道の下手にいるというおまんきつね、学校の裏手あたりに住むおしんきつね、そして西の方角にいるおよねきつねという、三匹の名を持つきつねが知られていた。気丈な性格で知られるあるお婆さんは「狐になんか化かされない」と常々口にしており、道端のゴミ袋を蹴ったり、橋の付近にいた鴨の一群に石を投げつけたりと、終始警戒を解かなかった。
ゴミ袋はまるで生き物のように逃げ、鴨の群れは一瞬で姿を消したというが、それでもこのお婆さんは油断しなかった。ところが買い物を終えて戻る道中、橋のあたりで家族が灯りを手に出迎えてくれたように見えたが、実はきつねの仕業だった。しまいには言葉巧みに信じ込まされ、尾で顔を打たれて気を失う羽目になったという。別の話では、寺へ向かう道中できつねを驚かせた仙蔵院という人物が、帰りの夜道で葬列に遭遇し、避けようとしても近づいてきて、死者が起き上がる様子まで見えたが、逃げ出してみるとまだ昼間だったということがあった。
酒を飲んだ帰りに提灯の光に見入っていたら持っていた魚を取られたという話や、結婚式の帰りに同じように魚を取られたという話も複数残っており、いずれもきつねの仕業とされている。人間の姿に化けて「休んでいきなさい」「風呂に入れ」と誘い、油断した隙に魚を持ち去るという手口も伝わっている。夜に坂の上の水面から煙のようなものがぼんやりと立ち上るのを見た話や、水戸納豆を作るための藁をきつねに狙われたという話も、この土地ならではのきつね話として残っている。
昭和9年から15年頃にかけては、郵便配達を仕事にしていた人物がとりわけ頻繁に化かされ、用水堀へ落とし込まれたり、田の中をあてどなく歩かされて疲れ切ってしまったりしたというが、近年ではそうした被害は聞かれなくなったという。また、荒砥にある学校からの帰路でもきつねの目撃談があるとの噂が広まっていて、子供たちはおびえながら足を速めて家路についていたと伝えられている。
- 広まり方
- 1995年の『常民』に掲載された中央大学民俗研究会「山形県西置賜郡白鷹町 調査報告書」に記録がある。
- 地域
- 山形県白鷹町
- 年代
- 昭和
- 検証状況
- 伝承由来
近代以前の民間伝承が下敷きになっている。 - タグ