のとちょうのきつねつきとまよい
能登町の狐憑きと迷い
- どんな話か
- 人を化かして迷わせたり取り憑いたりする一方、義理を通せば恵みも与えるとされ、狐にまつわる話が数多く語り継がれている。
- 細部
能登町には狐をめぐる話が数多く残されている。山で働いていると友人そっくりの声で呼ばれることがあり、応じてしまうと、道とは思えない場所を延々と歩かされる羽目になるといい、これは狐に化かされた典型例とされる。四月や五月ごろ、小雨が降る日を選ぶように、松の幹に身を寄せて澄んだ声で鳴くともいう。人に取り憑く力もあるとされ、憑かれるのは賢い人か、逆に性根の悪い人だといわれ、憑かれると縁の下でコンコンと鳴いたり油揚げを欲しがったりするようになる。
狐の足を鎌で傷つけて祟られ、憑かれてしまった者もいたと伝わる。松浪の市からの帰り道、目にとまった美しい娘についていくと、気がついたときにはタタラという寺の床下に座り込んでいたという体験談もある。姫はもとより狐の多い土地とされる。彼岸の中日、同じ松浪の市へ出かけていった人が道すがら美しい女に誘われてついていったところ、そのまま行方が分からなくなってしまった。しばらくして発見されたときには魂が抜けたようにぼんやりとした様子だったが、狐おとしの名人と評判の人物に祈ってもらったところ、次第に元の状態を取り戻したという。
一方で恩義に篤い一面も語られる。コノコ村(マレ島)の谷筋に住む狐は、家財道具を借りたいと申し出れば貸してくれる気前のよさがあった一方、借りたものをきちんと戻さない相手には仕返しをしたという。ある時、腹を立てた老人がこの狐の巣穴を掘り返したところ、その晩狐は夢の中に現れて命だけは助けてほしいと頼み込み、老人が佐渡へ逃がしてやると礼に金を授けてくれた。のちにその老人の孫が亡くなった際、授かった金を一緒に棺に納めたところ、なんと佐渡の地で生き返ったという奇妙な後日談も残っている。
弁天島にいる狐は、浜辺へ魚やイカがたくさん打ち上げられるようなことがあると、そのたびに能都町大字姫の五郎左衛門家まで知らせに来てくれたといい、おかげでこの家はいつも誰よりも早く浜へ拾いに行くことができたという。
- 広まり方
- 1967年の『常民』所収、中央大学民俗研究会「石川県鳳至郡能都町 高倉地区 調査報告書」に記録がある。
- 地域
- 石川県能登町
- 年代
- 不明
- 検証状況
- 伝承由来
近代以前の民間伝承が下敷きになっている。 - タグ