はくしゅうのきつねづくし
白州の狐尽くし
- どんな話か
- 夜道で化かされる話から、地名ごとに棲む名のある女狐、屋敷神として祀られる狐まで、白州町の狐尽くし。
- 細部
白州町には狐にまつわる話が非常に多く伝わっている。大工仕事の帰りに土産物をぐしゃぐしゃにされた話、製糸工場からの帰りに山の中を歩かされ菓子を取られた話、祭りの提灯行列だと思い込んで田の畦をどこまでも歩かされ、下駄も着物も台無しにしてしまった年寄りの話など、化かされて物や身なりを損なう話が数多い。夕方に立派な自動車に乗せられたと思ったら鎌の触れ合う金属音とともに消え去り、気づけば地べたに座り込んでいたという話もあり、狐は金属の音を嫌うため夜道では鍋などを鳴らして歩けば化かされないと伝えられる。
ほかにも、河原で一人喋りながらうろつく魚屋の正体が、対岸から尾を上下させて操っていた狐だったという話、夜道についてきた手拭い姿の女がふっと消えた話、いなくなったお婆さんが石の上で馬糞を木の葉に見立てて座っていた話、下肥溜めを風呂と思い込まされた話などが伝わる。夜道を歩いても村に着けなかった夫婦は、手土産の天ぷらに気づかれ、座ってタバコを吸うことで狐から解放されたという。
オサンの狐という個体は雨の前に雨戸をたたいて知らせて回ったとも語られる。油久保、川久保、西田といった地名にはそれぞれ、男狐や、オシンメサマのお姫様、オヒメサンといった名のある女狐が棲むとされ、姿を見せずに足音だけを立てる例も伝わっている。山で転んだ拍子に狐が憑いてしまい、身なりを崩して座敷を飛び回った女狐が、自分の子を案じて祈祷の末に去っていったという話や、逆に転んだことで肩に乗っていた狐が落ち、腹痛が治ったという話もある。
狐に取りつかれた際には、油揚げと稲荷の札を持って河原の橋に置き、振り返らずに帰るという送り出しの作法があった。狐は前から、ムジナは後ろから人を化かすとされ、ムジナは蹴飛ばせば消えるという区別も語られる。屋敷神として狐を祀り繁盛する家がある一方で、そうした家から物を持ち帰ると狐までついてきて病人に取りつくとされ、法印が火渡りの祈祷で狐を追い出す様子も伝わる。比志集落の法印屋敷と呼ばれる桑畑は、狐を使役し恐れられた法印がかつて住んだ跡地で、去り際に狐を封じ込めたという大きな榎は、今も伐れば狐が暴れ出すと言われて手をつけられずにいる。狐は河原で尾を使い、米つきや餅つきのような音を立てて人をからかうこともあったという。
- 広まり方
- 1978年刊行の『白州の民俗―山梨県北巨摩郡白州町旧菅原・鳳来村―』(東洋大学民俗研究会)口承文芸の章に、白州町各地で採集された狐の話としてまとめて記録されている。
- 地域
- 山梨県北杜市
- 年代
- 不明
- 検証状況
- 伝承由来
近代以前の民間伝承が下敷きになっている。 - タグ