ほくとのきつねびときつねつき
北杜の狐火と狐憑き
- どんな話か
- 提灯のような狐火から、火事を知らせる稲荷、葛の葉を思わせる嫁入り譚まで、白州町に伝わる狐の話。
- 細部
白州町には狐にまつわる話が数多く伝わる。雨が降る前には狐が提灯をつけるといい、夜に見える灯りは狐が提灯を下げて歩いている姿だと語られる。狐に化かされて山の中をいつまでも歩かされ、持っていた油揚げを食べられてしまった人もいたという。大武川のほとりには稲荷を祀る木の祠があり、かつては狐が火事の発生をいち早く知らせてくれたとも伝わる。話者の父や祖父は駒ヶ岳の行者として、神事や呪い、占いのほか、狐に憑かれた人の治療も引き受けていたという。
狐が人に憑いたときにはホウエンと呼ばれる祈祷者を頼み、女性を一人立てて狐をその体に移らせ、望むものを与えてから離れてもらうという手順が踏まれた。化かされたと気づいたときは、その場に座ってタバコを一服すればよいとも言われる。江戸時代には小野氏が藤塚という場所に多くの狐を放ち、そこで願掛けをすると狐が騒いで願いがかなったといい、災害の前にも同様に騒いだと語られている。
大正九年ごろまでは、どこからともなくイチッコと呼ばれる女性の占い師が訪れ、五十センチ四方ほどの箱に入れているという狐に寄り添うようにして眠り、神を呼んで運勢を占ったり死者の言葉を伝えたりしたという。さらに、猟師に追われていた狐を助けた男のもとへ、狐が女に化けて嫁入りし、ドウジマルという子までもうけたが、あるとき狐の姿で眠っているところを夫に見られてしまい、恋しくなったらいつでも尋ねてくるようにと言い残して姿を消したという話も伝わる。あとを追った子が姿を見せてほしいと願うと、うれしさのあまり思わず狐の姿のまま出てきてしまい、正体を見られてそれきりになったのだという。
- 広まり方
- 1978年刊行の『白州の民俗―山梨県北巨摩郡白州町旧菅原・鳳来村―』(東洋大学民俗研究会)と、1996年刊行の『柳沢の民俗―山梨県北巨摩郡武川村柳沢―』(東京女子大学史学科民俗調査団)にまたがって、白州町・武川村各地の狐の話が記録されている。
- 地域
- 山梨県北杜市
- 年代
- 大正
- 検証状況
- 伝承由来
近代以前の民間伝承が下敷きになっている。 - タグ