のりわら
のりわら
- どんな話か
- 葉山の神が憑く「のりわら」という役の選ばれ方や、神懸かりで火を渡っても平気だったという9つの事例をまとめた記録。
- 細部
大谷吉重という人物は少年時代の10歳からお宮のお籠もりに参加し、17歳になって初めて神が憑く体験をしたという。当時この部落には他にのりわらの担い手がいなかったため、それ以来ずっと彼が一人でこの役目を引き受けることになった。神が憑いた状態になると意識がぼんやりとし、自分の意志で体を動かせなくなる。体調がすぐれない日でも祭りの当日になると自然に神懸かりの状態へ入り、ひとりでに体が動き出したという。
のりわらを選ぶ場面では、憑きそうな人物を座らせてみなで試しに拝んでみる方法がとられ、一度その役についた人は以後も毎年同じ人が務め続けた。のりわらはみな男性で、理屈っぽく疑い深い性格の人には神が憑かないとされている。ある年、風邪で自宅にいたのりわらに、遠く離れたお宮で人々が拝み始めるとひとりでに神が乗り移り、ぴょんぴょんと跳ねながらお宮まで駆けつけたという話や、神が憑くとまばたきをしなくなり、燃え盛る火の中を渡っても炎に隠れて姿さえ見えなくなるという話も伝わる。
渡り終えた直後は気がはやって何をするかわからないため、むしろなどで押さえておいたという。託宣で個人名が出ることは通常ないが、あるとき神の威光を汚した者の名がはっきり示され、責める方法まで告げられると、その家はたちまち滅びたと語られている。神つけの場でのりわらを軽んじる言葉をささやいた客がたちまち青ざめて倒れたり、けがれた者がいると告げられた直後に生ぐさものを食べてきた者が戸外で倒れたりする例もあった。
高橋某というのりわらは特に優れており、ろくに祈らなくても威勢だけで神が憑き、座ったまま1.5メートルほど跳び上がることもあったという。泥酔して騒いだ者に幣をふりたてると、その男はひっくり返って泡を吹いて気を失った。妻が出産したため遠慮して自宅にいたあるのりわらは、体が震え出して食べたものを路地で吐き出したのち、身を清めて田の上をとぶようにお宮まで進んだが、白足袋の裏は少しも汚れていなかったという。
- 広まり方
- 1954年の『山陰民俗』所収、岩崎敏夫「はやまののりわらの話」、および1964年刊『福島県史 第23巻 民俗1』所収、岩崎敏夫・和田文夫・山口弥一郎「相馬郡飯館村民俗誌」(三・葉山の信仰)に記録がある。
- 地域
- 福島県飯舘村
- 年代
- 不明
- 検証状況
- 伝承由来
近代以前の民間伝承が下敷きになっている。 - タグ