代表例 01
グッドタイムズ・ウイルス
「Good Times」という件名のメールを開くと感染するとされた、実在しないコンピューターウイルスの噂。
背景と広まり方
1994年頃からインターネット利用者の間で、「Good Times」という件名のメールを受信・開封するとコンピューターが破壊されるという警告が出回った。実際にはそのようなウイルスは存在せず、警告メール自体が転送を重ねて広まる点でウイルスのような性質を持っていた。1997年、ハッカー集団カルト・オブ・ザ・デッド・カウが、インターネットの自称専門家の思慮のなさを示す実験としてこの噂を仕組んだと発表した。
警告を装ったメールが利用者の間で次々と転送を繰り返して広まった。
代表例 02
テッド・ザ・ケイバー
洞窟探検が趣味の男性が、友人と未踏の狭い洞窟を掘り進める様子を綴った日記形式のホラー。奇妙な叫び声や壁面の記号など不可解な出来事が徐々にエスカレートする、最初期のクリーピーパスタの一つとされる。
背景と広まり方
2001年3月23日から5月19日までの日付を持つ投稿として、無料ホスティングの個人サイトAngelfireに著者テッド・ヘゲマン氏が公開した。実話か創作かをめぐって長年議論の的になったが、ヘゲマン氏は後年、自身の実際の洞窟探検を土台にしつつ創作的な誇張を加えたフィクションであることを明らかにしている。2013年には低予算映画『Living Dark: The Story of Ted the Caver』として映像化された。
2000年代初頭の電子掲示板やチェーンメールを通じて広まり、日記形式で徐々に恐怖が進行する構成の先駆けとして後続のネット怪談に影響を与えたとされる。
代表例 03
きさらぎ駅
実在しない無人駅に到着してしまう体験談。実況形式の書き込みとして綴られた。
背景と広まり方
2004年に匿名掲示板へリアルタイム形式で投稿された一連の書き込みが原型で、異界に迷い込む「異界駅」ものの代表例として、多数の派生作品を生んだ。2004年1月8日深夜、はすみを名乗る投稿者は新浜松駅から乗った遠州鉄道の列車で、乗客が眠ったままの異常な走行の末、「きさらぎ駅」という無人駅に着いたと実況した。山間の草原で車に拾われた後、投稿は途絶える。2010年代以降は類似談が増え、漫画や2022年の映画にも展開した。
掲示板の実況という形式そのものが臨場感を生み、まとめサイトを介して定着した。
代表例 04
コトリバコ
女性と子供にのみ害を及ぼすとされる呪いの箱。作り方に子供の身体の一部を用いるという設定を持つ。
背景と広まり方
コトリバコは、2005年6月6日に匿名掲示板「2ちゃんねる」オカルト板へ投稿された長編怪談で、作中では呪具の名として登場する。女性と子供にのみ害を及ぼし、製作には間引いた子供の遺体の一部を用いる設定を持つ。苛烈な差別に耐えかねた被差別部落が作った呪いの箱という背景に、被差別の歴史や明治期の農民一揆を重ねた重層的な構成で、2000年代のインターネット発怪異譚の代表作とされる。
長さと構成の完成度が評価され、繰り返し引用・再投稿された。
代表例 05
SCP財団
現実に紛れて存在する超常の存在物を「収容・確保・保護」するという架空組織を舞台に、不特定多数の投稿者が創作を積み重ねる共同フィクション企画。
背景と広まり方
海外の匿名掲示板発の投稿群がまとめサイト上で体系化され、「オブジェクトクラス」や「収容プロトコル」といった独自の記述様式を軸に、無数の書き手が架空の危険物や怪異のレポートを書き足し続けている。実話怪談ではなく参加型創作である点を明示したうえで、多数の派生翻訳サイトを持つに至った。起点は2007年6月、4chanのオカルト板「/x/」に匿名投稿されたSCP-173で、同じ形式の投稿が続き、専用Wikiが作られた。
2008年にはWikidotへ移転し、Safe、Euclid、Keter、Thaumielなどの分類が整えられた。記録では2026年7月時点でSCP記事が1万400件超、短編が6300編超、公式言語支部が16に達している。
英語圏のまとめサイトから始まり、有志による翻訳を通じて日本語を含む多言語コミュニティへ拡大し、後続の創作怪談群に大きな影響を与えた。
代表例 06
祠ネタ
2024年10月、X(旧Twitter)ユーザー「文町」の投稿をきっかけに広まった、「祠を壊すと祟りを受ける」という筋書きのテンプレート的なネットミーム。
背景と広まり方
「人物が祠を壊してしまう」「その祠が実は恐ろしい存在だったと判明する」「壊した者に祟りが及ぶ」という定型の展開を持つやり取りが、2024年10月9日の文町の投稿をきっかけに広まった。「あの祠に行ったんか」「壊したんか」といった掛け合い形式のパロディが大喜利的に量産され、「祠壊しネタ」「祠もの」「祠構文」などの呼び名でも呼ばれる。祠を壊すと祟られるという発想自体は以前から創作物に見られたモチーフだが、この投稿によって一気に定型ミームとして流行した。
X上での大喜利的なアレンジ投稿をきっかけに、pixivや「小説家になろう」など創作投稿サイトでも祠ネタを題材にした作品が急増し、SNSの枠を越えて創作コミュニティ全体に波及した。